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2024年03月29日
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夢幻の薔薇 ver.Blanc

2008年07月05日
この物語は『罪薔薇/ユメニサクハナ』のひとつの解釈の形として書いたものです。
「絶対にこういう話なんです!」とかそういう訳じゃございません。
いわゆる二次創作みたいなものです(自作詞ですが
「こんな解釈もあるんだ~」位に軽く受け止めていただければ、と思います。

長らくお待たせしましたがふたつめの物語です。

読んで下さる方は「続きを読む。」からどうぞ。
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ここは一体、何処なのだろうか?
初めて来た筈なのに、何故か懐かしさを感じる。
わたしは前から知っているのだろうか?
この場所が、何処なのかを。

美しい薔薇が咲き乱れる園。
遠く、靄がかかっているけれど、せせらぎが聞こえる。
まるで夢を見ているようだわ。
それほどまでに幻想的な風景が拡がっている。
ふと、何の気なしに触れた花が語りかける。
痛いほどの想いに眩暈がした。

そして、気がつくとわたしはベッドの上にいた。
見慣れた空間、重苦しい部屋。
やはり、夢を見ていたのね。
溜息をもらしながらそっと指先に目をやると、
何故か赤い血が滲んでいる。
その先には夢で見た、あの花があった。
甘い香りに誘われる様に手を伸ばすと、急に視界が変化した。
また、あの場所だ。

こうして現実と夢の狭間に揺れ、
どちらが本当か解らなくなった頃、あの人が現れた。
優しかった。わたしの為に詩を唄ってくれた。
とても安らいだ。これが現実なのだと信じた。

本当はあの扉の向こうに現実が在るのは知っていたけれど、
この心地好い夢に溺れていたかった。
しかしまた、無常に現実に引き戻される。
それが悪夢の始まりだった。

あの人は変わらずわたしを愛してくれた。
いいえ、これまで以上、痛い程に。
いつからかその愛に恐れを抱く様になった。
その時にはもう、全ては遅かったというのに。

逃げて、逃げて、逃げた。
あの扉が何処にも見当らないのは何故?
この世界はこんなに狭かった?
全てが波の様に押し寄せてくる。

それは、あの人。

こうしてわたしは囚われ、赤い涙を流す。身体中から。
囚われていたのは、もう随分昔からだった様にも思えた。
これが現実なのかどうか・・・それさえももう関係ない。
意識は荊の海に溺れていく。

『さようなら、愛しい人。』
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